使徒的書簡「パトリス・コルデ」[試訳](6)

3.従うことにおける父


 

神がマリアに救いの計画を示したときと同じように、神はヨセフにも、ご自分の計画を明らかにしました。神はそれを、夢を通して行いました。夢は、聖書の中で、また古代の人々の間で、神がご自分の意志を明らかにするための手段の一つと考えられていました 。[12]


 ヨセフは、マリアの不可解な妊娠を前にして、ひじょうに苦悩しました。彼はマリアを「公に非難する」ことを望まず[13] 、「ひそかに離縁しよう」(マタ1・19)と決心しました。最初の夢の中で、天使は、彼の深刻なジレンマの解決を助けます:「恐れずにマリアを妻として迎え入れなさい。彼女の胎内に宿されているものは、聖霊によるのである。彼女は男の子を産む。その子をイエスと名づけなさい。その子は自分の民を罪から救うからである」(マタ1・20-21)。彼の答えは即座でした:「ヨセフは眠りから覚めると、主の使いが命じたとおり、彼女を妻として迎え入れた」(マタ1・24)。従うことで、彼は自分のドラマ(悲劇)を克服し、マリアを救ったのです。


 二番目の夢の中で、天使はヨセフに命じます:「起きよ。幼子とその母を連れて、エジプトへ逃げよ。そして、わたしが告げるまで、そこに留まれ。ヘロデが幼子を探し出して、殺そうとしている」(マタ2・13)。ヨセフはためらわずに従います。出会うだろう困難について質問することなしに:「ヨセフは起きて、夜のうちに幼子とその母とを連れてエジプトへ逃れ、ヘロデが死ぬまでそこに留まった」(マタ2・14-15)。


 エジプトでヨセフは、信頼と忍耐をもって、天使が約束した、自分の国に帰るための知らせを待ちました。神の使いが、第三の夢の中で、幼子を殺そうとしていた者たちが死んだことを知らせ、起きて、幼子とその母を連れてイスラエルに行くよう命じると(マタ2・19-20参照)、ヨセフは再び、直ちに、ためらうことなく従います:「ヨセフは起きて、幼子とその母を連れてイスラエルの地に帰った」(マタ2・21)。


 しかし、帰りの旅の途中で、「アルケラオが父のヘロデの跡を継いでユダヤを治めていると聞いて、ヨセフはそこに行くのを恐れた。すると、夢の中でお告げを受けたので――それは四回目です――、ガリラヤ地方に逃れ、ナザレという町に行って住んだ」(マタ2・22-23)。

[12]Cfr Gen 20,3; 28,12; 31,11.24; 40,8; 41,1-32; Nm 12,6; 1 Sam 3,3-10; Dn 2; 4; Gb 33,15.

[13]この場合、石打の刑が規定されていた(申命記22・20-21)。In questi casi era prevista anche la lapidazione (cfr Dt 22,20-21).

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