Sr.ルカの独り言：「復活節の独り言」より…（2021年4月19日）

日々の「戦い」

実際、教皇フランシスコの話の中には、「戦い」という言葉が頻繁に出てくる。

キリストの思いの逆を行くこの世の力、

私の中の、キリストの思いに反する思いと「戦い」続けなければならない、と。

使徒パウロは、キリストと出会った後の自分の人生を「闘い抜いた」と表現する。

「私は闘いを立派に闘い抜き、走るべき道のりを走り終え、

信仰を守り通しました」（二テモ4・7）。

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私はしばしば、イエスの母マリアの「戦い」を思う。

特に、イエスの十字架の時の、母マリアの「過越」の戦い。

わが子の苦しみ、死を前にして、

母としての当然の願いは、わが子の上に屈みこんで嘆くために、

しばらく放っておいてほしいということだろう。

けれど、イエスは母に「使命」を与え「派遣する」。

ご自分の母に、新しい普遍的な「母性」を与えて。

愛する弟子ヨハネに代表されるすべての弟子たち、

十字架の下で生まれつつあるご自分の教会の「母」となること。

マリアは、主から受けた派遣を「この身になりますように」と受け取り、生きる。

教会の伝統は、主の受難の翌日の土曜日に、

イエスが私たちに母として与えてくださった、母マリアの信仰を思い巡らしてきた。

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復活の光がうっすらと射し始めた聖土曜日、

真の「シオンの娘」、神の民イスラエルの民の一人であるマリアの中に、

あらゆる時代の信じる者たちの信仰が集中する。

最後に、ベネディクト十六世が回勅『希望による救い』（2007）の結びとして、

「希望の母」である聖マリアに向けた祈りを聞いてみたい。

マリアは教会のイコンである。

つまり、教会である私たちの「真の姿」、

神の、私たちがそうあることを望む「夢」である。

マリアは、希望することが「可能」なときに希望したのではない。

むしろ、人間的に考えれば、一条の希望の光も見えないところで、

神の約束のみに希望を置いて、つまり信仰において留まった。

マリアは、アブラハムのように、希望なきときに希望した。

つまりマリアは、神の民に求められてきた希望を、

暗闇の中で、まったくの信仰のうちに生きた。

ゆえに、マリアは教会の「母」、地上の巡礼を続ける教会、私たちを気遣う母であり、

私たちにキリストを示す方、

キリストのうちに神の子とされ、神の命をすでに生き始めている私たちが

ますますキリストに「形造られる」ことを望む母である。

十字架の時、あなたは、ダビデの後継者であり、神の子である、世の救い主が、

あたかも敗北したかのように、あざけりにさらされ、

犯罪者の間で死んでいくのを仰ぎ見なければなりませんでした。

そのときあなたはイエスのことばを受けました。

「婦人よ、ご覧なさい。あなたの子です」（ヨハネ19・26）。

あなたは十字架から新しい使命を与えられました。

あなたは十字架から、新たな意味での母となりました。

あなたの子イエスを信じ、イエスに従おうと望むすべての人の母となったのです。

悲しみの剣があなたの心を貫きました。希望は死んだのでしょうか。

世は決定的に光を失い、人生は目的を失ったままなのでしょうか。

このとき、あなたはおそらく心の奥底で、お告げのとき、

恐れるあなたに答えて語られた天使のことばにもう一度耳を傾けました。

「マリア、恐れることはない」（ルカ1・30）。

あなたの子である主は、どれほど何度も同じことを弟子たちに語ったことでしょうか。

「恐れることはない」。

ゴルゴタの暗闇のとき、あなたは心の中でもう一度このことばを聞きました。

裏切りの時の前に、イエスは弟子たちにいいました。

「勇気を出しなさい。わたしはすでに世に勝っている」（ヨハネ16・33）。

「心を騒がせるな。おびえるな」（ヨハネ14・27）。

「マリア、恐れることはない」。

ナザレにいたとき、天使はあなたにこうもいいました。

「その支配は終わることがない」（ルカ1・33）。

その支配は、始まる前に終わったのでしょうか。そうではありません。

十字架のもとで、イエスのことばによって、あなたは信じる者の母となりました。

信仰によって、あなたは聖土曜日の暗闇の中でも確かな希望を抱きました。

この信仰のうちに、あなたは復活の朝に向けて歩みました。

復活の喜びはあなたの心をとらえ、新たな方知恵あなたを弟子たちと結び付けました。

弟子たちは、信仰によってイエスの家族となるように定められていたからです。

こうしてあなたは信者の共同体のただ中にいました。…（『希望による救い』50）。

「キリストに最も似た方」である聖マリア、

あなたの母のご保護の中で、私たちが日々ますますキリストに形造られ、

キリストを人々に運ぶ者となることが出来ますように。